越前の苦労



部活の最中、越前リョーマはうんざりしていた。

朝から、跡部からの着信とメールが大量に送り込まれていたからだ。

跡部から何故、そんなことをされているかというと、

跡部とちょっとしたきっかけで付き合うことになったからだ。

―多分、お前のことが好きだ―

そんなことをいい、わざわざ学校まできて、告白していった。

相変わらずの人のことを考えないわがまま王子様だ。

越前も越前で、別に跡部のことが嫌いでもなかったし、多分、好きなのだろう。

何となくもあって、つきあうことになったのだが、

付き合って、一週間後に忍足に注意されたことがあった。

『跡部は束縛、わがままでどうしようもないで。覚悟しとき。』

といわれた。大抵のことは想像していていたのだが、

まさか、ここまでヒドイとは思わなかった。

三日前に部活で無理と伝えたはずなのだが、

それが今度は部活終ったら会え。との一点張りで、

『はい』と返事をするまでこの調子なのだろう。

改めて、跡部のどこに惚れたのだろうと考えさせられた。

ほとんど無視して部活が無事に終わり、携帯をみるとまたもや、びっくりする一文があった。


『今から行く。待ってろ』


「跡部さん、マジ…」

あの人ならやりかねないと思いつつ、何故今日にこだわるのだろう。

考えてみるものの、思いつかない。

着替えながら、半分どうしようか。と思ってみた。

さすがにここまで無視するとかわいそうな気がしてくる。

「越前」

不意に呼ばれた。手塚の声だ。

「お客だ」

手塚は手短くいうと、後ろに視線を送った。

そこには跡部が立っていた。

「跡部さん、本当に来たんだ…」

あきれるというか、逆にすごいと感心してしまう。

荷物を持って、跡部の前に向かう。

「まったく、この俺様を無視するとはいい度胸だぜ」

軽く笑みを浮かべながら、跡部は越前に嫌味を言った。

「跡部さん、俺飲み物買って来るんで待っててもらっていいですか?」

跡部はああ。と返事をした。

越前は近くの自販機に向かう。小銭を取り出し、お金を入れる。

ふと、思い出した。

先日、忍足に跡部の誕生日が今日ということを。

「わざわざ、会いにきたんだ…」

越前は少し嬉しくなった。

ジュースを手にして、跡部のところへ戻った越前は、跡部に缶を渡した。

「これくらいしかできないケド…誕生日おめでとうス」

跡部は普段飲んだことないであろうファンタを見つめて、笑みをこぼした。

「いや、最高の誕生日だ」

二人でファンタを飲みながら、歩いた。

あまり会話はないが、少しだけ距離が縮んだ気がした。


結局、跡部に車で家まで送ってもらった。

もちろん、運転手付きだが。

車から出るとき、跡部は

「越前、今日は会えて嬉しかったぜ」

そういって、軽くキスをされた。

「跡部さん…」

跡部はそのまま、越前を見送ると帰っていった。

越前はその唇に残る余韻を少しの間浸っていた。


後日、越前の家に大量のファンタの色々な味が届いた。

その直後、跡部からメールの着信があった。

『プレゼントだ。受け取れ、越前』

「跡部さん、確かにファンタ好きっていったケド…」

面白すぎ。

越前はそのメールを見ながら、笑みをこぼした。




おわり